シンスンフン初来日コンサート


2004年10月12日


 
シンスンフンの名前を知ったのは今年になってからだ。彼の名前は友達から借りた雑誌のお勧めアーティストという欄に載っていた。バラードの皇帝とか帝王と呼ばれているらしいというのが最初の情報だった。バラードといえばチョソンモということしか知らなかった私はシンスンフンという歌手の名前をそこでゲットしたのだ。

 私がこのように韓国人のアーティストに興味を持ったのは韓国ドラマからだ。韓国ドラマにはまって韓国語講座をラジオで聞きはじめ、
チョソンモ『アシナヨ』に出会った。こんなすてきな曲が韓国にはある!!それが韓国のバラードに夢中になる最初だったと思う。

 シンスンフンの名前を知ってからCDを購入するまでにはちょっと時間があった。最初のCD、シンスンフンの
アルバム第7集を得たのはなんとブックオフだった。これは奇跡にちかい。市価よりも安いCDはものすごく価値ある一枚であった。第7集をどれだけ聞いただろうか。CDのどの曲もみんな素敵だということは滅多にない。昨年、韓国に行った時に購入したチョソンモのCDも何回も聞いたがシンスンフンのこのCDは短時間にそれを上回る回数で聞いたということは間違えない。

 この貴重なCDを聞きはじめてからしばらくして、ネットで韓国人のアーティストの検索をしていた時に、今回のコンサートの情報を見つけた。
見つけた日が劇的で先行予約の最終日。すぐにチケットの予約をした。そして無事購入完了。最初のCDを購入してからそんなに時間がたたずにコンサートに行けるという幸運な出来事であった。

 韓国人アーティストへの人気は日本では高まってきているが、アーティストの来日は中国などにくらべるとまだ少ない。しかし今年になって2月の
イムンセ、5月のイルマとコンサートに行くチャンスがあり、ぐっとひきつけられるものを感じた。特にイムンセのコンサートは半分韓国に行ったような独特なムードが会場に流れていてそれにも魅了された。イムンセの名前を知ったのもテレビの韓国語講座の紹介でである。その時にコンサートのお知らせもやり、すぐに電話してチケットを手にいれた。日本のアーティストや欧米のアーティストにはない雰囲気があふれている韓国人のコンサートを日本で聞けるようになったというのは、日本人にとって、とてもラッキーなことだと思う。そのコンサートに行ってから、また韓国人のアーティストが来たら絶対にコンサートに行こうと思っていた。イルマの名前は、韓国を旅行する前にネットで知った。(確かネットだった)ちょうど韓国で新しいアルバムが出た時で、ソウルでそのアルバムを買ってすぐに聞いたら、ピアノの響きがよかったので、他のアルバムも購入した。イルマのコンサートはイムンセのコンサートの時にパンフレットを配っていて知った。
「えっ?イルマが来るの?」
とパンフレットをもらいながら思わず叫んだ。そして5月のコンサートに行くことになる。イルマは人物に好感がもてた。韓国人の礼儀正しさがなんともいえず新鮮だった。

 今年は2回も韓国人アーティストのコンサートに行けたと満足していたら、シンスンフンのコンサートに行けることになったのである。せっかくコンサートに行けるチャンスがあるのだからと
アルバムの第8集と第9集もHMVで購入した。第8集には『猟奇的な彼女』I believeがリリースされている。第7集も含めてこの3つのCDは必ずどれかがCDウオークマンにはいっていて、出かける時はバスの中でも電車の中でも聞き捲った。この3つのアルバムのどれがいいかと聞かれてもとても困るが最初に聞いた第7集が印象は強い。今回のコンサートの最後にも第7集にリリースされている曲が歌われた。

 10月12日。10月の雨なのに蒸し暑い。6時半開場。会場の
オーチャードホールは人でうまっていた。イムンセのコンサートにあったような韓国ローカルっていう感じは今回はまったくなかった。今の韓国ブームにのっている女性も多い。そこもイムンセのコンサートとはちょっと違うかと思った。それはやはりシンスンフンが『猟奇的な彼女』のテーマ曲を歌っているからだと思うが、彼のバラードは女性ファンにはぐっとくるものがあるという理由も多大である。

 受け付けでパンフレットをもらい、会場の中へ。友達はすでに席についていた。友達はパンフレットを見ながら言った。
「本当にいろいろな賞をもらっているのね」
そうそう。そういう基本情報があまりはいってこなかった。よく見るとこのパンフレットはコンパクトながらよくできている。一緒に歌ってほしい歌の歌詞に日本語の歌詞までついていた。願わくばと欲張るとプログラムの日本語の横にハングルで表記しておいてもらうとCDと照らし合わせてどの曲だったか復習できたのだが。(CDは韓国版なので反対に日本語の表記はない)

 コンサートは7時をちょっとすぎてはじまった。幕があく前から前の方に並んでいる人達のものすごい歓声。のりのりのところをみると韓国から駆け付けたファンか。みんなライトを手にしている。コンサートの出だしはこのファンに他の観客がひっぱられていった形だったかもしれない。しかしそれがシンスンフンの韓国での人気をしめしており、自然と私達ものりのりコンサートに引きずられていった結果となったのだ。

 1曲目。エイブルビ。バイオリンの演奏をバックに澄んだ声が響きわたる。素人の見方からすれば、バイオリンの演奏はともかく他の楽器はもうちょっとおさえてほしいと感じる。シンスンフンの声はそれほどよくとおる澄んだ声なのだ。1曲目、2曲目とアルバムで聞いた曲だった。やはりCDで聞く雰囲気とコンサートはまったく違う。これがシンスンフンのめざしている世界なのかと思う。3曲目は
I believe。スクリーンに『猟奇的な彼女』の画面が写し出された。画面の効果というのは確かにある。しかしシンスンフンのコンサートには画面は必要ないんじゃないかと思った。本当に本当にそれ程歌が素敵なのだ。

 途中、トークがはいる。最初の挨拶がなんとわかってしまって私は大喜びだ。シンスンフンが聞いた。
「韓国語がわかる方?」
やはり前の方のグループはぱっと手をあげている。私達のちょうど前にいたカップルも手をあげていた。そしてこの後通訳のチョさんがでてきた。
「日本語しかわからない方?」
結局、私はどちらにも手をあげられなかった。挨拶ぐらいの韓国語はちょっとわかるけど、もちろん通訳なしでは話しの内容はわからない。といってこのごろちょっとだけ韓国語がわかるようになっている。日本語しかと言われるとどうしようかと思う。まあこんなことで悩むことないか。

 チョさんは時々かなり簡単に訳してくれた。それがごくまれに私にもわかっておもしろかった。シンスンフンの話しが長いと困っていたし、いわゆる通訳という感じの人でなかったのもこういうコンサートではよかったのかもしれない。

 プログラムには
25曲書かれていた。その中には短編の人形劇をスクリーンで写し出す趣向があったり、一緒に踊ったりする曲もあった。この踊りはおもしろかった。私が好きな『オンマヤ』の振り付け。右手を上に上げてオンマヤーという歌詞に合わせて少しづつおろしていく。それがはじめは70度の角度でお願いしますと言われて爆笑だった。イムンセの時もダンスの曲があって振り付けがあった。言葉がわからなくても一緒に踊れるのが最高だ。今回も会場の全員が立って一緒に踊った。のりのりになって汗までかいてしまった。

 バンドの紹介がある。総勢30人のメンバーで来ているという。ものすごく多い人数ではないが、それでもこれだけの機材をもって韓国から大阪へそして東京へと始めての日本のコンサートをこなしていくのは目にみえない苦労もあったことと思う。バンドもダンサーもコーラスも若い人ばかりでエネルギーを感じる。

 シンスンフンは途中、通訳なしで話しをした。日本語も少し使っていた。わからないところはあったがそれもおもしろかった。いろいろな声のだし方を披露する。大学時代のアルバイトで歌った曲や男の人と女の人のパートを声をつかいわけてひとりで歌ってしまう『エンドレスラブ』は最高だった。女性の部分を歌う時の声の高さは見事だ。このトークの時、時々「チョさん」っと通訳を求める声をかけていたが、チョさんは舞台に来なかった。ここが演出だったのかチョさんが忙しかったのかちょっとわからなかったが、ひとりでこのトークをやってもらってよかったと思う。シンスンフンがこれから何回も日本で公演をして、もう少し日本語の単語が多くなれば、このトークは完璧になるだろう。

 エンディングの何曲かはまたスタンディングで会場中が盛り上がった。最後は私の超超大好きな『初めてその感じのように』。日本語のタイトルを聞くのは初めてだったが、CDでは何度も聞いている。よくこの曲を最後にしてくれたと思った。歌い終わっても拍手はおわらない。もちろんアンコールだ。アンコールでよかったのはマンボ。これだけバラード、ダンスと歌ってきた後にまったく違ったジャンルを歌った。これが本当にすごいと思ったしそして最高だった。観客ものりにのった。

 「ここで大阪公演は終わったんですけど」という説明があったが、でも観客は拍手拍手!!そして遊び感覚の歌なんだけどと言いながらもう一曲歌ってくれた。シンスンフンものっていて最高だった。

 このコンサートに行ってよかった。シンスンフンのすごさを見ることができたし、韓国人アーティストの今後の来日にもさらに期待することができた。最後の最後に最高の欲を言ってしまうと、シンスンフンが日本だけで見せられるコンサートにもっていけると最高なんだけどと思う。日本でやるコンサートと韓国でおこなわれるコンサートが違う雰囲気だったら日本でコンサートにいき、さらに韓国のコンサートにも行く!!韓国のファンも日本でのコンサートを見にくるとちょっと違うぞって感じたりしてグローバリゼーションをうちたてることができる。そうなったらすごいんだけど。




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