世宗路より光化門方面を望む


「今度、日本で韓国のドラマをやるから絶対に見てね。香港では大ブレイクしていて、そごうのバックミュージックでもこのドラマのテーマ曲が流れているのよ。」
このメールが私を韓国にはまらせてしまうきっかけになるとはその時は思ってもみなかったが、私はみごとにこの『秋の童話』というドラマにはまり、どんどん韓国ドラマの深みにおちいってしまった。しかしその時はまだ自分がその次ぎの年に韓国まで行ってしまうことになるとは思ってもみなかった。

 日本で韓国のドラマが本格的にはじまったのは多分テレビで流した『秋の童話』からだろう。そのあとで『冬のソナタ』、同じくテレビで『新貴公子』『ロマンス』テレビ朝日の『イブのすべて』そして NHKで現在放映中の『美しき日々』とこの1年で韓国ドラマは日本ではあたりまえのようになった。そしてドラマを見るにつれて韓国への興味が深まり、昨年、秋からラジオの韓国語講座を聞きはじめるようになった。 そしてこの秋、運よく次男の修学旅行があったのだ。思えば、一人旅などここ年以上したことがない。香港に 8年住んでいて、何回その間成田ー香港間を往復したかわからないが、いつも子供のバギーをおして、ミルクを持って飛行機に乗り込んだものだ。子供がすこし大きくなると、飛行機の中でいかに静かに過ごさせるかという重要課題をいつも頭にかかえ、自分がどうのように機内食を食べたかもわからないぐらい大変な旅ばかりであった。

 しかし、今年長男がお気楽大学生になり、次男が修学旅行に行くという二度とない機会がめぐってきたのだ。このチャンスに旅行をしなくて何をする!!去年から韓国にこのようにはまっていなかったらきっとイギリスに行っていただろう。しかしこういうのをタイミングというのだろうが、私の頭の中は韓国モードになっていた。そして交通公社で格安飛行機のチケットを買い、本屋で「地球の歩き方」を購入したのだ。


 この何年かで海外旅行は本当に便利になった。交通公社でも格安チケットを売るようになり、しかもそれがある程度、出発時間まで選べるという利点までついているのだ。昔は格安チケットを求めてどこ経由でとか何時頃などと条件をつけることなどできなかった。また大昔、イギリスを旅行した時など、ほとんど情報がないままに現地にいったものだが、現在では地球の歩き方を読めば、まるで現地にいったかのように細かく情報を得ることができる。格安の宿や田舎のバスの番号まで乗っていて、いたれりつくせりだ。加えてインターネットによる情報量もものすごい。今回もいろいろな方がネットにのせている情報を随分使わせていただいた。またソウルの宿もインターネットで予約した。こんなに革命的に旅行が便利にできるようになっていることを今まで知らなかったのがおかしいぐらいである。

 11月10日。次男が7時前に家を出た。そして長男が7時に家を出ると、さっそく家の片づけをはじめ、自分でもいつもこのようにてきばき働けばいいのにと思う程、手際よく家の仕事を終え、成田に出発した。大韓航空は成田の第一ターミナルだ。最寄り駅から1200円という一番安いルートを選ぶ。荷物は機内に持ち込める程少なくしたが、なんといってもカメラが荷物の1/3を占めてしまう程重たい。カメラもコンパクトなものにすればいいのだが、一眼レフを持っていかなかった時に限って後悔するので、やはり交換レンズもつけた一眼レフカメラは手ばなせない。

 格安チケットをもらう為に出発の2時間前に空港に着くように言われていた。日本の主な航空会社が第二ターミナルにいっていることもあるが、第一ターミナルは閑散とした感じがする。しかしその分空いていて快適だ。出国手続きもまったく並ばないでよかった。出国手続きは何年か前からカードを書かなくてよくなったらしい。そのかわりパスポートをコンピューターに通すようになっている。毎回毎回わずらわしかったあの出国カードがなくなったというのは画期的な出来事だ。しかしあまりに空いていて、出発までの時間が長かった。

 今回この旅行にいくにあたって、CDウオークマンというものを購入した。息子達はMDをいつも使っていて、CDウオークマンはMDよりも前のものという意識があるようだ。しかしこれを持参したのは正解で、空港での暇な時間、バスでの移動中、ホテルで手紙を書く時などフル活用できた。しかもソウルで買ったばかりのCDを聞き、よかったものは友達のお土産にもう一枚購入することもできた。

 ユーミンのCDを聞いていると搭乗時間になり、いよいよ出発である。飛行機にのる機会は何回もあったのだが、自分が好きな窓際の席にこの何十年か座ったことがない。飛行機から見る、朝焼け、夕焼け、地上の景色というのは美しいものだ。だから今回は絶対に窓際よ、とウィンドウサイドをオーダーしたのだが、あいにく行く時はずっと曇っていた。

 地上の係り員が言っていたが、12時55分発のソウル行きはめずらしく空いていた。隣に誰もいないというのが快適だった。この日は総選挙の次ぎの日で前日は遅くまで開票結果をテレビでみていたが、朝、新聞を読んでくる時間まではなかった。そこで客室乗務員の方に日本語で
「日本の新聞をください」
と言ったら、
「少々おまちください」
と言われたきり無視された。これはいったいなんだったのだろう。日本語ができないのがいやだったのか、めんどうくさかったのか。他の人に今度はおぼえたての韓国語で
「イルボロシンムルルイッソヨ」
と言ったらすぐに新聞が運ばれてきた。自分でも韓国語が通じて感激してしまった。
そうだ!何でも韓国語を使おう。

韓国という国
 成田ーソウル(インチョン空港)は本当に近い。出発後2時間半で到着だ。飛行機の中では今、韓国ではやっている音楽をチェックしなければならないし、食事も食べなければならない。しかし自分のことだけ考えていればいい時間は素敵なものだ。

 ソウルの天気は曇りときどき雨、という機内アナウンスがあったあと、すぐに飛行機はインチョン国際空港に到着した。ここの空港は新しくてきれいである。荷物は機内に持ち込みだったので、税関をほとんどフリーパスで抜けると、両替えのカウンターにいった。この両替えの為にラジオの講座の中にでてきた文章を暗記してきた。が、カウンターの係り員はパーフェクトな日本語で対応してくれ、しかも10秒程でイクスチェンジしてくれた。今回は10万ウオンのチャギアップスッピョという小切手を5枚作ってもらった。これはほとんど現金と同じように使える上、韓国では1万円に相当する10万ウオン札がないので便利だ。後は全部1万ウオン札でこちらにくれたが、細かいのがなくて大丈夫かと聞いてしまった。係のお姉さんは大丈夫ですといってくれたが、1万ウオンだけ千ウオン札にしてもらった。1万円チェンジしてもらうと1万ウオン札が10枚になるので、ものすごく金持ちになった気分だ。


 地球の歩き方に書いてあったとおりバス乗り場に行き、602番のバスを探す。602番のバスで市内のYMCAまで行くのだ。韓国でずっと助かったのはバスや地下鉄の乗り方がとてもわかりやすい。バス乗り場はすぐに見つかった。アンネとハングルと漢字でかいてあるジャンバーを着ているお兄さんに
「YMCAへカヨ?」(YMCAへ行きますか)
と聞いたらここでいいという。
「オルマエヨ?」(いくらですか)
と聞くとなんとかかんとかと答えてくれた。聞き直したら
「7千ウオンです」
と日本語で答えてくれて、
「この横のブースで買えます。」
と教えてくれた。このお兄さんは息子と同じぐらいであろうが、ものすごく礼儀ただしくて気持ちがよかった。しかもかちんこちんではなくて同じ仲間の子達とふざけあったりして子供らしいところも残っていて、「いいなあ」と思った。これをはじめとして韓国の若者が本当にいいなあと思うことが何度もあった。

日本の若者に無いすばらしいものをこの国の若者は持っている。

 空港から市内に行くバスは何種類かあるらしいが、リムジンの中でもっとも安いバスがもっとも宿に近いところを通るというラッキーな条件だった。市内までの7000ウオンというのは日本円にして700円だ。1時間程乗るので、それ程高くはないのだが、韓国の他の交通機関とくらべると割高だ。しかしその分サービスがいい。運転手さんは出発前に前に立って
「オソオシプシオ」(いらっしゃいませ)
と頭を下げる。
「ものすごくていねいじゃない」
と感激する。そして
「安全ベルトをしてください」
と座席の後ろまで確認していた。安全ベルトは韓国語でも安全ベルトだ。このように日本語と似ている言葉があると本当に助かる。この安全ベルトは高速道路を走る時は必ずするように案内があるようだ。

 外はあいにくの雨で景色を楽しむということはあまりできなかったが、バスの中のテレビ(液晶だった)ではイビョンホンのコマーシャルをやったり、去年のワールドカップの韓国のゴールの映像を流したりして楽しませてくれた。途中高速道路の標識にワールドカップ競技場という案内があって、さすが韓国だと思った。

 市内が近くなるとバスがあちこちの停留所で止まりはじめた。途中でおりる人もいて、どのように降りることを運転手さんに知らせるのかまわりを見ていたが最後までわからなかった。

 ソウル市内はイチョウの並木が美しく、レンガ造りの家や石の壁にマッチしており情緒たっぷりだ。遠くにガイドブックでみたチョンノタワーが見えてきた。あれが見えてくると降りることになる。YMCAのひとつ手前で降りる人がいて、運転手さんにここがYMCAかと聞くと「NEXT STOP」と教えてくれて、しかもそこでバスを止めてくれた。(だから最後までどのように降りるのを教えるのかわからなかったのだ)降りる時、運転手さんが
「アンニョンカセヨ」(さようなら)
と言ってくれたので私も
「コマプスムニダ」(ありがとう)
と言った。なにか会話している自分に感動してしまう。
インチョン空港ウリ銀行の袋 空港から市内までのバスのチケット
ソウル

 バスを降りたところに大福を売っているお店があるとガイドブックにのっていたが、荷物も重いし、とりあえず宿をめざす。バスに乗っている時はあんなに降っていた雨がやんでいる。(この旅行中すごく助かったのはほとんどの日が雨だったにもかかわらず、外を歩く時にあまり雨にぬれないですんだことだ。)

 バス停のすぐ横の交差点がチョンノの交差点で、ここを渡るには地下道にはいらなければならない。下に降りていくとそこはショッピングアーケードと地下鉄の切符売り場になっていた。ここにキムジェウオンのジーンズの大きな広告があり、これは写真だなと思っていたが、3日後にはこの広告が変わっていて写真をとりそこねた。地下道入り口2番から今度はアンコック(安国)方面へむけて歩く。

 6時近かったが、外は思ったよりもずっと明るくて助かった。チョンノからアンコックに向うこの通りもイチョウの並木道で歩道も広く、何回通っても素敵な道だった。屋台がすでにでており、お好み焼きや焼きぐりなどを売っていた。

 宿案内にあったとおり、ファミリーマートを過ぎたらお花やさんがあり、そこの露地を曲がる。そして日本留学センターという建物の横にめざすサモという宿があった。ここは書き込みなどで女の子(たぶんおばさんも含まれる)でも大丈夫ですとかきれいですというのを見て決め、インターネットで予約をしておいたのだ。1泊4万ウオン。お風呂付きだ。高くはないかなと思った。ただ実際に行ったらやはり高くはないだけ、あまりきれいでもなかった。まあそんな贅沢をいってはいけない。とにかく今回は安全に泊れればそれでいいのだ。受け付けで4万ウオンを払い4階の部屋にチェックインした。もちろん食事はついていないので、さっそく夜のチョンノのまちに行くことにした。

チョンノの路地裏1 チョンノの路地裏2 チョンノ路地裏3


チョンノは東京でいうと有楽町とか新橋みたいなところと考えればいいのか。ちょっと庶民的で近くには大統領官邸もあってみたいなところだ。有楽町などと違うのは、個人の家も道をはいっていくとたくさんあるところだ。因に日本大使館もこの付近にある。

 宿をでてすぐの大通りを繁華街に向う。途中キョトンカードという交通カードをキオスクみたいな小さなお店で買った。
「キョトンカードはいくらですか」
ときくと、なんとかかんとかといってくれたのでまた聞き直す。数字を簡単に聞き取ることなんか絶対にできないのだ。そしてここのおじいさんが言ったとおり「マンイーチョノベ」と何回も私は確認するようにくり返していたら、突然そのおじいさんが
「500ウオンはマージンです。」
と日本語でいった。確かにガイドブックには12000ウオンだと書いてあったので、成る程と思った。しかし私はマージンのことを考えているのではなくて、単に数字の確認をしていたのだ。

 韓国旅行中にこのように日本語をパーフェクトに近い発音で話せるお年寄りに何回か会った。それだけでも日本が昔、この土地で何をしてきたかがわかるというものだ。

 チョンノの繁華街には屋台がたくさん並んでおり、仕事帰りのカップルなどが仲良くそこで食事をしている。ちらっと見たお店にのり巻きがあり、どうしようかなと思っていたら、おばさんが
「どれにしますか?」
と言ったので、おもわず
「これ2つ」
と薄焼き卵で巻いたのり巻きをさしてしまった。ラップがかかったお皿にそののり巻きをとってくれ、はさみでチョンチョンと切り、
「はいどうぞ」
とだしてくれた。割り箸は屋台の骨組みの棒のところにまとめておいてあり、それをとって食べる。これがものすごくおいしかった。たくわんを巻いただけののり巻きを薄焼き卵でくるっと巻く。しかも卵がほんのりあたたかい。日本のおばさんがこんなところでこんな晩ごはんを食べるなんて、と思うかもしれないけど、屋台のキムパブ(のり巻き)は絶対におすすめの品だ。こののり巻きは1本千ウオン。この日の晩御飯は200円だったことになる。食べた後、先程の大福屋を探して、大福を買った。ひとつ50円だが、まったく日本の大福と同じでわざわざ買うことはなかったかなと思った。




ソウルのキョトンカード(地下鉄、バスなどに乗れる)

 チョンノの地下街のお店も見る。小さなお店がいくつも並んでいる普通の地下街だったが、刺繍のお店が2軒もあり、結構にぎわっていた。韓国の人もこのような手仕事が好きなんだろうな。

 地下街から永豊文庫という本屋に行った。この本屋はどの地図にも載っている大きな本屋だ。実際にものすごく大きくてものすごく混んでいて圧倒された。韓国人は絶対に本が好きな国民だ。どのコーナーも本を見ている人でいっぱいだ。日本だったら、法律のコーナーなどは空いているし、この頃は学習参考書のコーナーだってあまり学生の姿をみない。場所柄なのかあまり年輩の方はいなかったが、幼児から大人までいたるコーナーに本を求める人がいるのはすごい。児童書のコーナーで絵本を見たが決して安くない。1万ウオン(1000円)ぐらいする本もざらだ。でも母親達は真剣に本を選んでいるし、子供達はその間、好きな本を一生懸命に読んでいる。走り回ったりしている子もいないのだ。ただただ見るものにびっくりした。ここでは星の王子様がブームのようだった。

 地下2階に行くと、CDのコーナーと文房具のコーナーがあった。さっそくCDのコーナーで冬のソナタのサウンドトラック版を探す。店員のお姉さんに聞くとすぐにわかってくれて、ドラマのサウンドトラックばかりおいてあるコーナーに連れていってくれた。「冬のソナタ」はすぐにあったし、「秋の童話」もあったが、一番欲しかった「美しき日々」は売り切れだった。その後ずっとあちこちで「美しき日々」を探したがなかった。しかし「冬のソナタ」と「秋の童話」はどこにでもあるということはこれは日本人の為のCDか。きっと記録的な売り上げになっているに違いない。

 そこでは「冬のソナタ」とイルマのピアノ曲2枚のアルバムを買った。また文房具店では星の王子様の絵葉書とソウルの絵葉書とウオンビンとキムジェウオンのブロマイドを買った。ブロマイドはこの2人のしかなかったのが残念だった。

 帰りにファミリーマートに寄り飲み物を買う。今、韓国ではマンゴジュースがはやっているとインターネットの情報をしいれていたので、迷うことなくデルモンテのマンゴジュースを買った。これはものすごくおいしくて、日本に持って帰りたいぐらいだった。ファミリーマートは日本とまったく同じつくりで日本人にとってはとても便利だ。おにぎりも買ってみたが、日本と同じようにのりが後からまけるようになっていた。

 このように暗くなってから街を歩くことができて、コンビニに寄りながら帰ることができる治安のいい国は世界の中でもそう多くはないだろう。韓国はそれができる国だ。

 宿(ホテルと呼ぶにはちょっとはばかる)に帰り、テレビをつけるが映りがよくない。そこで買ってきたばかりのCDを聞きながら、友達に絵葉書を書いた。気がつくと10時半。私の時間で言えばとても遅い時間だ。あわてて寝た。 


チョンノタワー チョンノの繁華街





トップページに戻る



inserted by FC2 system